Web版株主通信 「Business Report2024」をご覧いただきありがとうございます。2024年1月期は売上高・営業利益ともに過去最高となり、当社の目指すビジョンに対し、成長を実感できました。代表取締役会長CEO清水祐孝と代表取締役社長COO小林史生が、今後の展望を語ります。ぜひご一読ください。
「終活」のインフラを作り上げることで、
我が国の社会に貢献します。
代表取締役会長CEO
清水 祐孝
2024年1月期、既存事業は前半の不調を乗り越え回復基調に転じることができました。
代表取締役会長CEO
清水 祐孝
介護・アセットマネジメント・官民協働の3事業は大きく成長し、飛躍の1年となりました。
小林今期の増益要因は、新規3事業の順調な成長です。例えば介護事業は2021年10月にエイジプラスがグループ傘下に入ったことでシナジー効果が得られており、業績に貢献してくれたと思っています。アセットマネジメント事業も、不動産登記や遺品整理など相続の周辺ニーズに対するラインナップ拡大が奏功しました。特筆すべきは官民協働事業で、地方自治体との新規提携が増加し、委託案件も多様化したことにより、日本の人口の約半数にリーチできる規模にまで成長しました。特に横浜市、川崎市等の大きな自治体との提携は話題になりました。
清水 高齢社会が進展する中で、住民の高齢化率はますます高まり、都市への人口集中、単身世帯の増加などさまざまな社会構造の変化が激しくなっています。こうした変化を理由に、国や地方自治体の課題感の高まりを感じています。
小林地方自治体は規模が大きくなるほど取り組みに対する意思決定にも時間がかかると予想していたのですが、高齢社会に対する課題感の高まりからか、非常にスピーディに解決すべき課題を示してくださるので、適切にソリューションを提供できたのではないかと思います。
清水 直近では地方自治体へ終活連携協定の調印式に出かけることが増えましたが、その際に首長との会話の中で「空き家問題」が頻繁に話題に上がります。社会全体で終活に対する課題意識が高まっている一方で、行政の課題は他にも数多くあります。だからこそ中長期的にこうした課題に対するソリューションの提供を進めていくべきだと思います。
小林今期は数多くの地方自治体と新しい関係性を築き、多様なソリューションを提供することができました。今後も私たちがどのように社会に貢献できるのか、引き続き地方自治体とともに検討していきます。
清水 東京都内のある地方自治体との協働事業で窓口業務を受託しているのですが、先日、住民からのアンケートで対応が非常に素晴らしいと評価をいただき、区長からお褒めいただいたことは、大きな励み、自信になりました。家族の死というデリケートなタイミングでの住民対応が多く、心のこもった対応に心がけていたことがこのような評価につながりました。
システムリプレイスメントは大きな投資。その分のリターンも大きく、生産性向上につながっています。
小林2024年1月期における大きな投資といえば、顧客管理システムのリプレイスメントです。これまでは各事業で個別に顧客管理システムを構築していましたが、全事業でお客様を横断的に管理できる顧客管理システムに入れ替えました。これによりクロスユースがさらに促進しますし、取引先の管理も劇的に改善されます。バックオフィスの効率化により生産性も向上しますので、今後、大きな成果につながるでしょう。
清水 昨年は生成AI元年といわれました。シニアの領域においてもテクノロジーは最大限活用されることとなるとは思いますが、一方で、フェイス・トゥ・フェイスの重要性も見直されることでしょう。高齢社会においては、双方を大切にしていくことが、今後の当社の成長につながるものと信じています。
小林私たちの官民協働事業がソフト面をサポートしますし、生産性を向上させる部分は、テクノロジーを活用して推進していきたいと思います。特に生成AIを組織のなかにどう組み込むかは検討しています。
中期経営計画を発表。終活インフラを社会に浸透させるための基盤づくりの3年にします。
小林 2024年3月14日には、中期経営計画を発表しました。
高齢社会の進展により、終活の社会課題が複雑化するのは、もはや避けて通れません。しかし、介護、保険と一つ一つの課題に対する解決プレイヤーは存在しますが、それぞれのプレイヤーの手前でユーザーが悩んでいるというのが現実です。適切な情報をユーザーフレンドリーに、一貫性を持って提供している事業者が存在しないのは、とても残念なことです。このソリューションを担うことが鎌倉新書のミッションであり、ビジョンでもあります。これからの3年は、このような終活インフラを社会に浸透させるための基盤をつくり、シニアとそのご家族がポジティブに生きることを支えます。
清水企業には、同じことを繰り返している会社と、違うことにチャレンジし続ける会社に二分できるように思います。当社は、祖業が仏教書の出版事業だったことを考えると、私たちはまさに後者の部類に属します。今後もこの重要なミッション・ビジョンのもと、新たなチャレンジを継続し、それを企業業績と社会貢献に結び付けようと考えています。
小林 大切なことは、日々挑戦し続けることだと思います。新しいことに挑み、業績を5倍10倍にできるフェーズにある会社は、実は多くはありません。もちろん会社のカルチャーも関わりますし、マーケットの事情もあります。鎌倉新書は、社会やマーケットの変化に応じて挑戦し続けられる会社だと思います。
代表取締役社長COO
小林 史生
売上目標の120億円は現実的な数字。「クロスユースの拡充」「集客チャンネルの多様化」「サービスの拡充」に取り組むことで目指せると考えています。
清水 長期ビジョンでは、2035年に売上を500億円規模と想定していますが、これは今の終活市場のポテンシャルを考えると、そう難しくない数字だと思っています。2027年中期事業計画の目標売上である120億円も、各事業の市場規模を積み上げて計算したものです。マーケットサイズから逆算しても、現在私たちが目指している終活のインフラが完成したら十分達成できるものだと思います。
小林そのためには、これまでのサービスの“足し算”から、“かけ算”にシフトチェンジしていきたいと考えています。それには3つのポイントをかけ合わせることが必要です。
1つめは、「クロスユースの強化」です。終活の悩みは一つではなく、イベントごとに生じます。そこで私たちの各サービスのお客様が抱えている課題に対して、ワンストップで適切なサービスを提供して、スケールを拡大していきたい。それには、この度のシステムリプレイスをはじめとしてデジタルの活用が不可欠です。
2つめは「集客チャネルの多様化」です。私たちはこれまでオンラインで集客していましたが、その集客チャンネルを多様化していきます。つまり、お客様の家族の特性やシチュエーションに対応できるよう、例えば、店舗でオフラインでお客様の対応を始めました。加えて介護や自治体など、さまざまな領域で集客に取り組みます。
3つめは「サービスの拡充」です。特に、生前領域でサービスの拡充を進めていきます。例えば介護事業を通じてお客様の終活のニーズや課題を吸い上げて、お客様のライフタイムバリューを伸ばすような事業を展開していくこともできると思っています。
清水 その3つを3年でしっかり実現できれば、終活インフラの基盤は完成とまではいきませんが確立すると考えています。そして、次はこれの浸透フェーズに入ります。多くの人々に「終活インフラ」の存在を告知し、どんどん利用していただくための手を打っていきます。そして利用者の声が、次のサービスの改善と結びつくことで、長期のビジョンが達成できるものと考えています。
2025年はあくまで通過点。成長戦略を強化し、より一層の売上と利益の拡大を目指します。
小林 中期経営計画を踏まえると2025年はあくまで通過点です。来期の目標も、中長期のテーマに従い生じるものです。3年後の2027年の目標に掲げた数値売上120億円・営業利益25億円を達成するため、2025年1月期も大幅な増収増益を計画しています。
清水 この国にとって必要な終活インフラづくりに邁進しますので、どうぞ引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
今期、おくやみコーナーの運営を全面的に担わせていただきました23区内の自治体がありました。窓口開設から約半年後に、区長にお話をお聞きしたところ、効果測定のアンケート調査の結果、ネガティブな意見が1件も寄せられなかったとのこと。
「これは役所業務としては非常に珍しい。ご家族を亡くされた方が憔悴して駆け込んでいらしたとき、市民の気持ちに寄り添った窓口業務対応をしてくれているからこそのことでしょう」とお褒めいただき、とても誇らしい気持ちになりました。
2024年1月期の事業別紹介件数と成約率
(2023年2月1日~2024年1月31日累計)
※電話およびメールフォーム等
からのお問い合わせ
紹介件数は年々拡⼤
“終活の鎌倉新書”の認知が浸透することで
事業ポートフォリオの多⾓化が進み
クロスユースによる成⻑加速
2024年1月期の取り組みの一部をご紹介します。
全国の地方自治体では、葬祭や死後の手続きをはじめとする相談に日々対応していますが、遺族にとって死亡や相続に関する手続きは生涯で繰り返し発生するものではないため、悩みや不安を持つ方が多いことも明らかになっています。さらに、これらのおくやみ関連の手続きは、複数の課で手続きを行う必要があるため、複雑で長時間に渡ることも多く、遺族の負担となっています。
このような状況のなか、遺族の負担軽減を目指して、「おくやみコーナー」を設置する自治体が急増し、内閣官房も「おくやみコーナーの設置ガイドライン」(※)を策定する等、おくやみコーナーの設置を進める動きが出てきています。
※令和2年5月15日 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室「おくやみコーナーの設置ガイドライン」(出典)政府 CIO
ポータル「おくやみコーナー」を設置する市町村支援
こうした背景から、横浜市でも「お悔やみ窓口」の設置にむけた検討を行い、この度、鶴見区・瀬谷区で運営が開始されるに至りました。
※2024年3月31日で試行実施が終わり、この度、4月1日より正式実施に移行する運びとなりました。
株式会社鎌倉新書が2022年にオープンさせた終活相談窓口「窓口de終活(現:シニアと家族の相談室)」の1周年を記念して、2023年12月4日、イベント「コレカラ終活フェア~人生をもっと楽しく、もっと自分らしく~」が錦糸町マルイ8階のすみだ産業会館で開催されました。
当日は、日本を代表するシンガー・ソング・ライター、作詞・作曲家として活躍する吉幾三さんと、元高知県知事で現在は一般財団法人教育支援グローバル基金代表理事として、未来ある若者達の支援活動に取り組む橋本大二郎さんを迎えてのトークショーや累計応募数が2,131件となった「終活川柳大賞」の授賞式を開催しました。
また、終活の各分野で活躍する専門家たちも交えてのパネルディスカッションにて、最近の終活事情やここでしか聞けない話など、リアルな終活の今をお伝えし、大盛況のうちに幕を閉じました。
これまで各事業部で作成されていたお客様のデータベースを統合し、全社共通のプラットフォーム上で管理できるようシステムのリプレイスメントをしました。
システムリプレイスメントの目的は下記の3つです。
当社は、2023年11月21日、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より「プライバシーマーク」を取得いたしました。今回の共通システムでは、プライバシーマーク基準に沿って個人情報を取り扱います。
詳しくはこちらからオンライン化された共通システムを取引先にも提供することで、紹介、成約管理、請求等の業務をワンストップで実行可能とし、大幅な生産性向上につながりました。
終活において「お墓探し」「仏壇の購入」などのそれぞれの活動は連続性をもっていることが多く、そのため当社もこれまでクロスユースを推進してまいりました。今回のシステムリプレイスメントを通じて、DX化が推進され、お客様の情報が統合、ペルソナが明確化し、お客様のニーズに対して、より一層クロスユースを加速することができると考えています。
今後は、現在利用している葬祭・相続のシステムだけでなく、お墓・仏壇、相続不動産のシステムリリースも予定しています。
清水2024年1月期の決算は、売上高58.5億円(前年度比約17%増)、営業利益8.1億円(同約19%増)と、ともに過去最高となりました。25年度1月期も引き続き、二桁成長を持続していきたいと思います。
小林一方、既存事業のお墓・仏壇事業や葬祭事業の実績が上半期の計画に比して低調に推移したことは反省すべき点でしたが、速やかに策を講じたことにより第4四半期からは回復基調に転じることができました。
清水私たちはベンチャー企業ですから、新しいチャレンジの連続です。挑戦に想定外の事態が発生するのは当然のことであり、考えられる最適な手を素早く打ち、いかにプラスに転換していくかが重要です。その対応に企業の力量が表れると考えています。