2020/01/01
ビジネス
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
2020は覚えやすいし(zozoみたい)オリンピックも開催されるわが国にとってメモリアルな年。わたしたちの会社も昨年スタートしたさまざまなプロジェクトがどこまで発展するか、そのために仲間をどれだけ増やせるか、メモリアルな一年になるだろう。
前回は社会貢献について書いてみたが、今回はどっぷりわたしたちが志向しているビジネスについて、勝手にベンチマークさせてもらっている尊敬すべき3つの会社について触れてみたい。なお、これらは新聞や経済誌、ビジネス書などから得た情報と自らの想像によって書いている、無礼はないと思うけど、間違っていたらごめんなさい。
Google、日本M&Aセンター、キーエンス
国籍も業種も異なる企業であるがこの3つの会社には共通点がある。それは何か? 経済や企業経営に興味があり、日経新聞をちゃんと読んでいる人ならば簡単に「高収益企業であること」と答えるだろう。その通りで、これらの企業の収益性はいずれも並外れて高い。
しかし、「なぜこれらの企業は収益性が高いのか、その共通点は何か」と問えば、簡単に答えられる人は少ないはずだ。いかんせんやっている事業がバラバラ、Googleは検索エンジンを出発点として巨大化したIT企業であり、日本M&Aセンターは企業のM&Aの仲介企業、そしてキーエンスは産業用の機械メーカーである。
だから、高収益の理由は別個に存在していると考えるのが普通だろう。でも、これらの企業に高収益をもたらしている極めて重要なポイント、共通点が存在している、とわたしは考えている。その上で厚かましくも、わたしたちの会社も同じ共通点を持つ企業になれる! なんて社内で頻繁にわめいている。「顧客とそのニーズを集めることに決定的な差異を生み出した企業」これが共通点、順を追ってみてみよう。
例えば自動車メーカーのマツダが自社のクルマを購入する顧客を見つけ出すシーンを考えて欲しい(事例は何でもいいのだが)。マツダはテレビCMや新聞広告を通して自社のクルマの素晴らしさを視聴者に訴求する。さらに販売店は折り込みチラシを使って、「週末は○○キャンペーン」などと称して店舗への来店誘致活動を行っている。しかし、テレビCMや新聞広告、折り込みチラシを見ている人には自動車免許を持っていない未成年者もいれば、クルマなんて必要ない高齢者もいる。またクルマを買おうなどとは全く思っていない人もいる。さらには、クルマを買おうとは思っているがベンツやBMWのような外国車にしか興味のない人もいる。つまりマツダは、クルマなんて全く買おうと思っていない人たちにまで費用をまき散らしながら1人の顧客を集めている、マツダに限らずこれがアナログ広告の実態だ。
この状況を一変させたのがGoogleである。Googleの検索窓に マツダ 販売店 とか マツダ デミオ などと打ち込んだ人は、Googleに対して「わたしはマツダ車の購入を検討しています」と白状したことになる、自らのIPアドレスと共に。
そしてGoogleはメーカーであるマツダやその販売店にそのことを知らせ、広告料というカタチで対価を受け取る。上述のテレビCMや新聞広告、折り込みチラシと比較しても圧倒的に顧客とそのニーズを効率的に集めている。これがGoogleの高収益を支えることになる。
日本M&Aセンター
この会社については2018年2月号の本稿でも書いているので詳しくはそちらを参照していただきたいのだが、1990年代に創業した同社の着眼点はざっと以下のようなものだ。日本経済の成長期から成熟期への移行や、産業構造の変化(サービス化)に伴い、あるいは少子化や都市化の進展によって、後継者がいない中小・零細企業は増え、企業を売却せざるを得ない人たちは増えるはずだ。次にこの仮説が正しいとすれば、そんな人たちに出会うにはどうしたら良いかと考える。それにはオーナー経営者とリアルな接点を持っている地方銀行等の金融機関、税理士、会計事務所、商工会議所などとネットワークを作り情報を得ることだ、と。こんな手順で事業を展開した結果、徐々に時代が同社の着眼に追いついていくことで、業績は飛躍的に発展した。時代を先取りすることで、会社を売りたいという顧客ニーズを効率的に集めることに成功したのが同社だと考えることができる。現在でも張り巡らされたそのネットワークは強じんで、同業他社よりも1ケタ違う事業規模、そして驚異的な収益性を維持している。
キーエンス
ふつうメーカーというのは、製品ありきである。製品が工場でどんどん作られ、それを営業担当者が売りに行く。考え方の起点が顧客のニーズではなく、自社の製品なのだ。これを逆転させようとすると、工場を所有してはいけない。所有するとどうしても出来上がってくる製品を売りに行ってしまい、顧客ニーズを多少ねじ曲げてでも、あるいは大幅に値引きしてでも売ろうということになってしまう。キーエンスは顧客のニーズ~工場の経営者であれば生産性の改善~の実現を徹底的に追い求める。そして、そのために必要な製品を提案し、生産性の改善を支援する。そうすれば顧客に販売する価格は、製造原価がベースになるのではなく、それらの製品の導入によって、顧客にもたらさせる生産性の改善額がベースとなる。自社では製品や製造のノウハウは所有しても、工場は所有せず必要に応じて製品を製造する。このようにして、キーエンスは顧客のニーズの実現と自社の収益性を両立させた。顧客とそのニーズを集めることに決定的な差異を生み出した代表的な企業である。
冒頭の通りわたしたちも「顧客とそのニーズを集めることに決定的な差異を生み出した企業」になりたいと考え、これらの尊敬すべき3社を断りもなくベンチマークさせてもらっている。「利潤とは差異を生み出し続けること」とこれまた尊敬する経済学者の岩井克人先生は仰っているし、顧客に喜ばれつつも、わたしたちもハッピーになれるなんて何と素晴らしいことか。そんなことを追求するこの1年、楽しんでいきたい。
株式会社鎌倉新書
代表取締役社長兼会長CEO 清水祐孝