2019/01/01
組織
新年おめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
今年は平成の締めくくりの年であり、新たな時代の幕開けでもある。平成がどんな時代だったのかについてはメディアで報じられつつあるが、スタート時は世界の経済の中心だったけれども、終了時点では辺境の地に追いやられてしまった、そんな時代だったようだ。いっぽう、わたしたちの事業の周辺で言えば、平成の30 年という月日の中で高齢社会は大きく進展し、それに伴って生じた社会課題は拡大の一途を辿っている。継続的に拡大するこのような課題に対して、今後もチャレンジを加速化させていきたいと考えている。
話は変わるが、昨年末に東京証券取引所で「上場後の持続成長を目指すための心構え」(証券リサーチセンター主催)というテーマのセミナーが開催された。上場企業や上場を目指す未上場企業の経営者を対象に、上場後にも成長を持続させるためにはどのような考えが必要なのか、というとこについて議論や検討をしようというイベントだ。
何故だが分からないが、そこでパネリストをやれ、とわたしにお鉢が回ってきた。わたしたちの企業は、まだまだ持続的成長を語れるほどの実績もなければ、わたし自身にそのような見識もない。ということで当初はお断りをしようと考えたが、議論に加わらせていただくことも、自分にとってはいい勉強の機会になるだろうと考えなおし、パネラーとして参加させていただくことにした。
「上場後の持続的成長」とタイトルにあるように、上場をすると成長が止まってしまう企業が多いという問題意識が、資本市場に関わる公的機関や企業にはあるようだ。有形無形の経営資源が得られる上場というステップは決してゴールではなく、成長を持続化させるという意味でのスタートラインだという認識が企業側には乏しいケースが多い、ということらしい。
上場を目指す企業は、取り組んできた事業が一定の収益を得られるようになってくると、これを最短で加速させることに躍起になる。(上場という)目的を達成するためには、数字に表れる成果(売上や利益)が何より求められるからだ。このことを追い求める過程で人は増え、組織の課題がどんどん大きくなったり、新たな課題が生まれたりしているのだが、ここに切り込む企業は滅多にない。何故なら、それらは数値に表れにくい、つまり(数字にのみフォーカスしている)マネジメントが認識し難い経営課題であるからだ。仮に認識したとしても、そうした課題は長期的に腰を据えて取り組まなければならなかったり(=目先の数字が悪化する)、場合によっては、それまでのマネジメントスタイルを、つまり自らを否定しなくてはならないものであったりするからだ。
このような企業が運よく上場できたとしよう。組織の課題は放置されたまま、事業の拡大にひた走る。新たな資本が入ってきたこともあり「M &A やって成長します」と内部の課題は放置し、外部に活路を求めたりする。既存の事業が成長している間はこの問題は露呈しないが、事業には必ず賞味期限というものがある。どこかで成長は止まり、成熟・衰退モードに入っていく。本来はこの過程で、拡大した、あるいは新たに生じた組織の課題に切り込むことで、事業の寿命を延ばしたり、再加速させたりすることが必要なはずである。
組織のどこに問題が生じているのかを認識し、そこに切り込む。組織の風土や環境を徹底的に整備する。要は、「どんな事業をやるか」と同様「どんな組織がやるのか」ということが極めて重要で、急成長して上場に至った企業は一度立ち止まりそこにフォーカスしなければ成長が止まってしまうよ、ということなのだと思う。後者に取り組み、目途が立てば、また前者にフォーカスして、事業の再加速、あるいは新たな事業へのチャレンジをすればいい。
企業の「持続的成長」を考えるとき、「どんな事業をやるのか」だけではなく「どんな組織がやるのか」という双方に目配せをしてマネメントをする。前者でけを無邪気に推し進めるマネジメントチームならば、そこに切り込みが必要なのではないか、なんて考えさせてくれたいい機会であった。イベントでは短い時間しか話せなかったので、補足しておきたい。
わたしたちが出来てるかって? 胸を張ってハイ!とは言えないけど、そこに多くのエネルギーを投じています、とは答えられるかな。
株式会社鎌倉新書
代表取締役会長 清水祐孝