2021/02/01
組織
私たちの会社は、世界一の超高齢社会であるわが国において高齢者やそのご家族が直面する課題や問題、やりたいこと、やっておきたいことなどさまざまなサービスを提供している。高齢化、長寿化、都市化、少子化等やそれらに伴う家族関係の変化によりこの領域は日本の大きな社会課題となっている。
その社名の通り私たちはの会社は出版業としてスタートしているが、時代の変化に適応し業種や業態を少しづつ変化させながら今日まで何とか生き残ってきた。中でも大きかったのは 21 世紀に差し掛かる時期でのインターネットを活用した事業へのシフトである。
事業のシフトは時代の変化を見据えたと言えば聞こえは良いが、実際のところは「新たなチャレンジを行い変わっていかなければ会社は潰れてしまう」という危機意識からのことだった(債務超過の会社に巻き込んでくれた父親に感謝!)。幸いにもインターネットの普及に伴い事業環境が好転し、2015 年には株式上場をすることができた。上場後は人材の採用や資金面での制約もかなり解消されたこともあり、人材の積極的な採用を進めつつ、事業はすごくはないけど、それなり順調に推移をしている。だけど、それは従業員や経営陣の精進、努力の賜物かと言えば、決してそれだけではない。
私たちの事業が順調に成長をしていかれるのは、そもそも論として「豊かな社会基盤がこの社会には用意されているから」である。事業をクルマに見立ててみれば、「クルマが心地よく走行ができるのは、そもそも舗装された道があるから」なのだ。
この日本という国には世界一とは言えないまでも、豊かな社会基盤(インフラ)が存在する。けれどそれは、世界中のどこにでも提供されているものではない。例えば南スーダンや、アフガニスタン、ハイチなどの最貧国と言われる国々では、さまざまな理由からこの国のような豊かな社会基盤は用意されていない。
「事業は私たちが築いてきました」とは言っても良いと思う。だけど「豊かな社会基盤」は誰が築いてくれたのだろうか。
それは、私たちの両親、祖父母など、この国で生まれ育った先輩たちの所業である。わが国には戦争という大きな過ちを犯し、豊かさを大きく棄損した時期がある。そこから復興していくことで、今日の豊かな社会に至っているわけだが、そこに至る過程では、大きな犠牲が払われている。戦争で夥しい数の戦死者を生み、この悲しみが平和な国を目指す原動力になり、そこで生き残った人やその次の世代の人たちの強い思いが、豊かな国を形成してきた、のだろう。
私たちは、そのような先輩たちの築いてきたインフラに乗って今を生きているわけである。「事業がうまくいっています」なんて自分だけの功績のように思ってはいけないのだ。
そのように考えれば、私たちにはやるべきことがあるはずだ。まずは、そのような基盤を築いてくれた先輩たちへの感謝の気持ちを持つこと(ここについては趣旨と外れるので割愛するけど)。次に考えるべきことは、私たちも先輩たちのように次の世代のための豊かな社会基盤づくりを担うべきなのではないだろうか、そのような義務を負っているのではないのだろうかということである。
私たちの会社は高齢者やその家族に向けたサービスを提供している。今後もますます進展していくわが国の超高齢社会の中で、この大きな社会課題の解決に向けた基盤づくりこそが私たちの使命である、働く仲間にいつもそのように説いている。
そうした背景のもとで私たちの会社のミッションやビジョンはできあがっている。この国の子供や孫たちの世代の基盤をつくり上げることを目的としてこの会社は存在していて、売上や利益は目的を達成するための手段(クルマで言えばガソリン)であってそれ自体が目的ではない。子供が社会人になり、生活コストが下がったせいだろうか、だんだん原理主義者のようになってきた(笑)。
株式会社鎌倉新書
代表取締役会長 CEO 清水祐孝