2014/10/30
社会
先日、「ハッカソン」なるイベントでスピーチをさせていただく機会があった。「ハッカソン」って何、という人も多いだろうし、私もそれまで知らなかった。「ハッカソン」とは、「ハック」(hack:プログラミングに取り組むという意味)と「マラソン」を掛け合わせた造語で、プログラマーが自らのアイデアと技術を競う合うイベントのことだそうである。このイベントは数人ずつのチームに分かれ、「自分の人生をより幸せなものにする」「家族や大事な人、未来の人たちを幸せにする」という2つの課題についてアイデアを出し、これらを解決するサービスやアプリケーションを3日間で開発するという催しだった。主催するIT企業にとっては新たなサービスや人材の発掘につながる可能性があるし、参加者にとってみれば、自らのアイデア、あるいはそれを具現化する力を発揮し、世に知らしめたいという思いがあるのだろう。後で主催者の方から伺った話だと、イベントで優勝したチームのサービスは、本格的に事業化される予定だという。
さて、このイベントでスピーチしたテーマは、人生の終末期(ライフエンディング)における問題点というようなものであった。でも、「未来の人たちを幸せにする」という課題から考えると少し狭すぎるような気がしたので、マクロなテーマで話をさせてもらった。それは、世界で例を見ないスピードで高齢社会が加速化する私たちの国はどうなっていくのかということ。図はこの時の資料に使ったもので、単に人口動態に関わるものに過ぎない。だけどこれを見ているだけで、これからの若者たちは大変だなあ、と改めて考えさせられてしまう内容だ。想像を膨らませて読み取ってみると…。
過去
1980年頃、高齢者の数は全体の1割にも満たなかった。
人口は増加傾向にあったし、高度経済成長が終わっても、引き続き活力ある社会だった。
国家財政も社会保障も大きな問題はなく、また消費も旺盛で、景気の波はあるものの順調に経済も成長していた。
現在
今日では高齢者が増え続けた結果、おおよそ4人にひとりが高齢者になってしまった。
高齢者の激増で医療費等の社会保障費は増え続けており、歯止めが利かなくなっている。
国家財政も危機的状況で、国の借金である国債の発行も増え続けている。
高齢社会の時代を迎え、国民の負担も増え続けており、消費もまだら状況で、単純に伸びるという状況にはない。
未来
高齢化に伴い死亡者数が今後20〜30年は増加傾向だ。
いっぽうで生まれてくる子どもは少ないままの推移が続くだろう。
結果として人口は減り続け、2060年前後に人口は9000万人を切る。これは現在のおおよそ4分の3の水準だ。
高齢者が増え続けた結果、全体の4割までを占めるようになっている。
有権者の半数が高齢者になってしまい、政治家は高齢者への心地良い政策を訴える。そうしなければ選挙に落ちてしまうのだから。
人口動態だけを拡大解釈すれば、このような明るくない未来を描けてしまう。もちろん、危機を正しく認識すれば、未来の大人たちはもっと良い社会に暮らすことが出来るだろう。でも、置かれた環境は明らかにこれまでとは異なることを知っておくべきだろう。高齢社会は言い換えれば子ども・若者圧迫社会ということなのかもしれない。
株式会社 鎌倉新書
代表取締役社長 清水 祐孝